1日葬
80代
女性
故郷
母
無宗教
僕の母は海女さん。
この町で生まれて、この町で仕事をして、この町で結婚をして、この町で子育てをした母。
この町には母の全てがある。
僕たちが小さいときは、漁へ行く母について港までよく行ったもんだ。
海女として働く姿が僕にとっての母。
晩年は仁木町にある果樹園のサクランボを買いに行くのが日課だった。
今年も一緒に食べるはずだったのに…
ウニ漁をしていた母は近くのお寿司屋さんにウニを卸していた。
ウニの時期になると行列ができる有名店だ。
だけど、僕たち家族が食べるのはいつも味噌ラーメン。
それが家族の味。
父を亡くした母は1人でこの町に住んでいた。
けど、年には勝てず…
施設に入ってからは、『自宅に帰りたい』と何度も言っていた。
誰も住んでいないが残して置いた自宅。
その願いを最期叶えてあげれた事が最初で最後の親孝行。
そして、今年食べれなかったサクランボをお供えできた。
僕の後悔を全て消し去ってくれた葬儀だった。